2017年7月28日金曜日

これがハンドスピナーの起源!

以前の記事で、考案者と言われているCatherine Hettinger氏が1993年に出願した特許は
現在のハンドスピナーとは似て非なる物であるとBloombergが主張していると書きました。
では、実際どのように違うものなのかを確認してみましょう。

特許は全6ページです。短くて良かった(笑)

まずは、発明の名称ですが、"SPINNING TOY"、そのまま回転玩具です。
そして、発明者はCatherine A. Hettingger、出願日が1993528日です。
今から24年も前ですね。

そして、起源と言われるその姿がこちら!!






おぉ~。
確かに、Bloombergがいちゃもんをつけたくなる理由も分かります。
本当に起源と言うのが正しいような原始的な構造のおもちゃですね。

円盤型UFOのような形をしている、このハンドスピナーの使い方は、ドーム状部分の内側に指を入れて、反対の手で回して遊ぶ仕組みです。
そして、材質はプラスチック製になっています。
現在の主流である、ボールベアリングの主軸にメタルボディの構造で
ギャンギャン回るものとは似て非なる物であると言えそうです。
また、特許書類の中では分かりにくいですが、実物を見てみるとかなり大きく、指で挟むような持ち方はとてもできないサイズです。
どちらかと言うと、皿回しのような使い方になると思います。
長く回そうとすると軽い運動になって良いかもしれません。
使用例の中では、棒やペンを内側に入れて使っても良いと書いてありますし。

形状的には現在の物と大分違うなぁということが分かりましたが、
特許を読み進めていくと興味深い部分が出てきました。
そもそもどのような思いが込められていたのか?ということです。

これは発明の背景に書かれています。ざっくりと次の通り。
"多くの人は渋滞や、手持ち無沙汰の時、気晴らしをしたくなるもので、
車や家の中で動きたくなったりそわそわするのは普通のことです。
また、禁煙中の人は何か気を紛らわせられる物が欲しくなります。
そのような人達に快感を与えられるのがこの発明です。"

ここでハンドスピナーのアメリカでの名称であるFidget spinnerにもある、"Fidget(そわそわする)"という言葉も使われています。
重症筋無力症を患いながらも娘と遊ぶ手段を考案したという話は有名ですが、
このようなそわそわしてしまう人たちの一助になりたいという思いも、特許から読み取ることができます。

効果がどれほどかについては様々な意見があるものの、
現在のハンドスピナーも、そわそわする人たちの気を紛らわせるのには役に立っているとは思います。
特許の観点から見ると、同一の発明であるとするには厳しい部分があるかもしれませんが、コンセプトの想いを見ると、発案者と讃えられるのにも一理あるのかなと思いました。

なお、Hettingger氏はとしてクラウドファンディング、Kick starterを使って資金を集め、このスピナーをClassic fidget spinnerとして復活させようとしています。
こちらもまた別記事で書こうかなと思います。

さて、特許には実施例と呼ばれる、原案のバリエーションのような物があります。
今回の特許にもいくつかそのようなバリエーションがあって面白いので、

次回の記事で書こうかと思います。

2017年7月22日土曜日

ハンドスピナーの歴史

最近と言ってももう話題になって久しいですが、ハンドスピナーなるおもちゃが人気ですね。

どういった歴史があるのか気になったので、調査がてらにまとめておきたいと思います。

実は、ハンドスピナーの原型はすでに1993年に出来上がっていたのです。

アメリカ、フロリダ州オーランドのCatherine Hettinger氏が考案者と言われています。2017年時点で御年63歳です。
"言われている"と書いた理由は、考案者に諸説あるためで、後述します。

彼女がこのハンドスピナー(米国ではFidget spinner[フィジェットスピナー]という名前)を考案したのが1993年で、39歳の時です。
彼女は1990年に重症筋無力症という、力が入らなくなってしまう病気を患ってしまいました。そんな中、大事な娘と遊ぶことはできないかと試行錯誤している中で生まれてきた物であるとガーディアン紙では語っています。
なお、国内の多くの記事で、"重症筋無力症を患っていた娘のため"と間違われていますが、母であるCatherine氏が患っています。
また、ADHDや発達障害の改善のために開発された器具という話も誤りです。

彼女は、1993年に"spinning toy"(回転おもちゃ)という名前で特許を出願し、1997年に晴れて特許が認定されました。
実際に自分でハンドスピナーの試作を製造し、地元フロリダのショーへ持ち込んだところ、結構な人気を博したそうです。
そして、その勢いに乗って、Hasbroという米国のおもちゃメーカーに売り込みました。日本では聞きなれないかもしれませんが、人生ゲーム、モノポリー、ジェンガ、スターウォーズだったり、マーベルだったりのおもちゃを展開している超大手です。

しかし、Hasbroには採用してもらうことができませんでした。
結局、うまくビジネスパートナーを見つけることができず、$400の更新費用を支払うことが困難となり、2005年にこの特許を失効させてしまいました。特許は維持するだけでもお金はかかりますからね。
こうして、その時点では日の目を見ることがなかったハンドスピナーですが、
その後、時を経ておもちゃメーカーから発売され、2016年に突如として米国で大ヒットするわけです。

さて、Wikipediaには彼女が考案者であると書かれていますが、
実は、今年になり本当に彼女が考案者なのかという指摘をBloombergがしています。
なぜかと言うと、彼女が出した特許と、現在のハンドスピナーの構造にはあまり共通性が見られないからです。
本人も"原型だと思うか?"という質問に対し、自分では分からないので弁理士に聞いてくれと回答しています。
Bloombergは弁理士に検証を依頼した結果、彼女の発明が原型だと主張するのは難しいとしています。
彼女を考案者とした他紙に対する批判なのか、おもちゃメーカーサイドのポジションを取っているのか背景は分かりませんが、そのように結論づけられています。

結局、ハンドスピナーの考案者には諸説あり、Scott McCoskery氏が2014年に発明したTorqbarというものが、現在のハンドスピナーの原型であると見る向きもあります。

とりあえず、今回は歴史その1ということで、

他の説については、また記事を書きたいと思います。